まず始める。


「一人で起業するなんて、よく思い切ったよね」

「うまくいく保証がないのにどうして一人でやってるの?」

手作り石鹸を始めた頃、行政支援もスポンサーもなく、同様のことをしている先輩やアドバイスをくれる人などもいない中、見様見真似で一人でホームページを作り、OEM先、仕入れ元を探して石鹸屋さんを始めました。

その頃から今でも、冒頭のような言葉を言われることがよくあります。ようやるわ、と呆れたような口調で言われることもあれば、逆に、自分も何かをやりたいけどできずにいるのに、どうしてこの人は始められたんだろう、という感じで聞かれることも。

後者の、「いつかはやりたいけど、今はやっていないこと」がある人は意外と多いんだなと感じます。そんな方に言えるのは、「いつか」は来ないかもしれないということ。

私が石鹸の事業をやりたいと思ったのは、2018年にうさぎ石鹸を立ち上げるよりも10年近く前のことでした。当時、夫だった人からは「お前にできるわけがない。確実に成功する保証がないならやってはダメだ」と反対されて、やりたいと思いながらもできないまま、全く別の仕事をしたりして過ごしていました。

そんな中、ある方と職場で知り合いました。彼女は癌で妹さんを亡くしていました。妹さんは結婚されていて、子育てしながら仕事もしていたそうですが、癌の進行が早く、入院、闘病の後に亡くなられたそうです。彼女が、実家に戻った際に、実家に送られてきた妹さんの遺品を整理していたら、1冊のノートを見つけたそうです。

それは、妹さんの「夢ノート」でした。今勤めている仕事とは別の、自分がやりたい仕事をやりたい、そのために必要な準備は何か、などが書かれていたそうです。

「今は子育てで時間もお金もかかるから、子供が大きくなって落ちいついたら始めたいな」とか、「今は資金を貯めておいて、それを元手にはじめよう」と考えていたのかと思うと、面識もない妹さんなのに、涙がこぼれそうになるのに必死でした。妹さんは、まさか自分の人生が病気により早く終わってしまうことなんて予想していなかったと思います。

石鹸の事業を反対された後も、諦め切れず、いつか老後には反対されなくなってできるようになるんじゃないか、などと悠長に考えていた私は、急に怖くなりました。

しかもちょうど同じ時期に、慢性胃腸炎で1ヶ月ほど通常の食事が取れなくなったり、嘔吐や目眩などの原因不明の体調不良が頻発し、「この先重大な病気になるかもしれないし、自分がいつまで生きられるかわからない」という危機感も生まれました。

やりたいことを我慢して10年過ごして、「我慢したおかげでよかったこと」はひとつもありませんでした。きっとこのまま死ぬことになったら、「死ぬ前にやっておけばよかった」と後悔するだろう、それならばやってみた方が絶対良いはず、と思ったのです。命の危険があるチャレンジというわけでもないのだから、失敗したら止めれば良いだけの話。

事業を始めても、反対する人はいても、応援してくれる人は身内にいませんでした。(子供たちはマルシェ の手伝いなどに来てくれましたが。)

私の母は、一度も石鹸を買ってくれたことはないし、マルシェを見に来た事もありません。

ネットショップをオープンした時に「新しいことを始められたんですね。おめでとうございます」と言ってくれたのは、失業保険の休止手続きに行ったハローワークの職員さんだけでした。

それでも、続けていくうちに、石鹸を使った友達が「使い心地が良かったから友達にプレゼントしたい」と購入してくれたり、「手作り石鹸を昔作っていたので大変さがわかるから頑張って」と応援してくれる方に出会えるようになりました。

私のやることが人に迷惑をかけたり、不幸にしてしまうようなことならやらない方が良いけれど、良かった、応援するよ、と言ってくれる人がいることならば、できる限り続けていきたいと思っています。

過去の私のように、やりたいことがあっても始められていない人がいたら言ってあげたいこと。

「まず出来ることから始めてみようよ!」

失敗した時に、「それみたことか」というような意地悪を言ってくる人がいるかもしれないけど、そういう人は今後の人生に関与しない人なので、気にする必要ありません。「失敗しちゃったよー、テヘペロ。」とでも言っておけば良いでしょう。うまくいくか失敗するか、事前に予想することはできるけれど、実際にやってみないことには結果はわかりません。

もちろん、挑戦しないままで人生を終えても、後悔しないし十分幸せなのであれば無理する必要はありません。

いつかやりたいけど、今は時間がないから、とか経験もないのにできるか不安だから、と思っている間に、もうできなくなるかもしれません。あなたの人生はあなたのものです。

なぜ今更、きっかけになった話を書いたのかというと。。。

現在勤めている職場(石鹸とは別の仕事)の別のグループの方が、先日自宅の火事で亡くなったという話を聞いたからです。

私は彼女とは直接仕事で関わることはなく、廊下ですれ違う時や退社時に挨拶をする程度の仲だったのですが、毎日会っていた人が急に事故で亡くなってしまうという事実に、改めて衝撃を受け、改めて、チャレンジしたいのに踏み出せない人がいたら背中を押したいと思い、今回の記事を書きました。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です